新ごみ処理施設 整備・運営費 概算611億円超
じっくり読んでください。ゴミ処理施設は大切な施設ですが市民の税金で作ります
建設費予算(債務負担)に3市の市長で合意できず
鴻巣行田北本環境資源組合は、11月15日開会予定の第3回定例議会に、ごみ処理新施設建設費の補正予算(債務負担行為)の提出を見送ることになりました。
7月に開催された第2回定例議会で、組合執行部は建設事業者の入札に必要な予算(債務負担)を提出すると説明していました。
10月上旬に、定例会に提出する建設費の債務負担について、事前に議員に説明したいので全員協議会の開催を求められ、10月28日に開催することを決めました。
しかし、10月21日に開催された正副管理者会議(3市の市長)で、予算に対して意見の一致ができず、議会への提出を見送ることになりました。
事業費基本計画に比べ146%
10月28日の全員協議会に示されたごみ処理新施設建設費及び運営費(20年間)、周辺整備の概算事業費は、本体施設設計建設費(ゴミ焼却施設・不燃粗大ごみ処理施設・プラスチック資源化施設・ストックヤード)331億7,000万円、運営費234億4,000万円、周辺整備費45億3,000万円(主な事業は、別表下参照)で総合計611億4,000万円と説明がありました。
平成28年に策定した基本計画では、本体施設設計建設費は248億円、運営費(20年間)170億円の合計418億円でした。その整備費に比べると3 5%上昇しました。
さらに周辺整備費約45億円を加味すると、46%増加したことになります。
組合議会では、これまで数名の議員が、
- 地盤が軟弱地であること
- ハザートマップで冠水の可能性が高いこと
から、土木費(地盤改良や盛土、造成工事)が増加するのではなかいと、指摘されていました。
また、候補地の選定にも疑義が出されていました。
行田市長65億円少ない試算示す
行田市長は、これまでも行田市小針の焼却場予定地での建設費が安いと主張していました。
10月28日、行田市長は正副管理者会議に提出した資料では、環境資源組合が議会へ説明した611億4,000万円より65億3,700万円少ない549億300万円の試算を示しました。
さて、建設整備費が基本計画より上昇した理由は明らかになっていません。一部に、基本計画の金額に消費税が含まれていないといっているようです。もし、それが事実なら、仕事に対する認識が疑われます。いつの時点でも、経費を見積るのに、最終的に税込金額を表示するのが標準と思います。
東京オリンピックで資材と人件費が高騰していると言われています。しかし基本計画を策定した平成28年には、建設業界はオリンピック高騰が始まっていて、そのうえ建設時期は平成30年以降であることが確実でしょうから、それを加味した基本計画であるべきです。
最終的に3市の市長は、611億円の事業費に一致できませんでした。
北本市のゴミ処理問題の経過
北本市は、市民が出した廃棄物を、昭和59年に吉見町に整備した「中部環境センター」で焼却処分しています。
それからすでに30年が過ぎ、施設の老朽化による建替えが課題でした。このことを受け、吉見町、鴻巣市の3市で検討し始めましたが、そこに東松山市や比企郡の町村が加わり、協議が難しくなっていました。
そのような中で、平成24年ごろ鴻巣市が協議から離脱し行田市と協議、鴻巣市に建設することを条件に北本市も参加要請がありました。石津市長(当時)は議会に参加するかしないかの協議を要請、議会は代表者会議を開催し、活発な議論を重ね、平成25年に鴻巣市・行田市グループに参加することを決め、広域化の枠組みは行田市・鴻巣市・北本市の3市とし、建設地は鴻巣市内等の基本合意書を締結しました。
平成26年に、鴻巣行田北本環境資源組合を設立し、管理者は、住民代表者や専門家による施設検討委員会を設置し、基本方針、建設地の選定を行い、基本計画の策定、建設予定地の地盤調査、処分方式の選定などを行ってきました。
しかし、平成30年、議員から建設地の選定に疑惑がある、また地盤が軟弱であり盛土や地盤改良で土木費がかさむなどの指摘が出ていました。また、事業費の総額が示されないなど、課題を抱えていました。
鴻巣 行田 北本 3市のごみ処理新施設 建設問題 〜 ゴミ減少へ市民の理解を
建設地は軟弱地盤・後背低地の地形
地層上部「非常に柔らかい」
平成27年に建設地は鴻巣市郷地字魔王(通称:安養寺/5.5h)に選定されました。その後、平成29年3月地質調査が行われ報告書が提出されました。
一部の組合議員は、選定地は「後背低地であり、水害と共に地層が軟弱である」と指摘。重量の思いゴミ処理施設の建設には不適はないかとの疑問が出ていました。
この度整備費の概算が説明されました(表面参照)。その説明の中で、粗造成費(図1:地層が軟弱であるため現在の表面から1.5mをすき取り、3mの盛り土をして県道と同じ高さにする工事費)は約31億2千万円、その他の土木工事14億6千万円で約46億円との説明がありました。
また、地形(図2)に伴うと思われる事業費です。周辺整備費45億円の内25億円(水路、道路・水道・高圧線など)と余熱利用施設(地元要望の温浴施設)約15億円が計上されています。
このように、建設地の地形・地盤(地層)の影響を受けた可能性のある事業費は、粗造成費、周辺整備費、地元要望などを含めると約70億円超が見込まれています。
補助対象外事業費340億円超
この粗造成費・周辺整備費・地元要望(温浴施設)の費用は、国の交付金(補助金)の対象になっていません。
また同様に交付金の対象にならない事業費は、建設業務の一般管理とその他の土木費です。管理費は建設費の10%(20億円)程度、その他の土木費15億円の35億円が見込まれる可能性があります。運営費の234億円(20年間)も国の補助金はありません。
このように見ていくと、交付金の対象にならない事業費は直接経費で100億円以上で、市の財政に直接的に影響が与えられます。人口減少等の影響で、今後市税収入が減少すると予測されていますので、組合議員は、構成市の分担すべき債務負担には、慎重にも慎重を喫して建設事業を判断しなければならないでしょう。
安全性とコスト重視の原則
平成25年の3市の合意から7年目です。平成26年から27年に建設地の選定の検討会議がありました。会議録を読んで気づいことですが、この検討会議では、地層(地形・地盤)についての調査・検討は一切されていません。
一般的に、ごみ処理施設は重化学工業施設です。当然、施設に相当の加重がかかりますから、自然災害への対応(安全性)と建設コスト(経済性)そして地元の理解が不可欠の条件です。
特に、地盤の強度は、安全性と建設コストから最優先される検討事項と、元重化学工業企業で新工場建設の企画担当された市民の意見です。
今となっては、遅きに失した感がありますが、関係する皆で知恵を最大限に出し、より適正かつ合理的な結論を導き出すことが、住民の”市民益”につながることではないでしょうか。
"迷惑施設" 脱却がカギか
本施設の建設整備に向けた検討が、まったく問題なく進んでいたかというと、見解の相違もあるかもしれませんが、数名の議員から数点疑義が出されていました。一つは、建設地選定の疑義です。
建設地の選定に対する根強い疑義
鴻巣市安養寺に選定したが、疑義を指摘した議員は初めからこの場所ありきで選定している。市内52カ所を調査し、10数項目の評価で最終選定したと報告しましたが、実際は53カ所評価し、評価点2番目の場所を削除したことが明らかになりました。
今も不信と疑義が根強く続いています。
次に、地盤の問題です。前述のように、後背低地で地層の上層部が「非常に柔らかい」地盤であることから、土壌改良や盛土など土木費が増加する。
また、鴻巣市のハザートマップで、冠水が最大5mと表示され、水害が懸念されていました。水路の整備も必要で、建設地とし不適ではないかという疑問が数名の議員から出されていました。
このような条件の悪い建設地を、恣意的に選定したとの疑義は、今も消えていません。真相は分かりません。
建設地の地域住民の過分の理解を
最近吉見町を中心とした新施設建設の組合も、地元対策施設を巡り解散となっています。
ごみ処理施設は建設地の市民に嫌われる「迷惑施設」と言われ、建設したくないという政治的エゴが働いた結果ではないでしょうか。
この種の施設が「迷惑施設」という嫌悪感からの脱却がカギを握っています。