工藤日出夫 駅前レポート 第4号(2018年11月)

新・北本創生へのイノベーションを探る連載(4回目)

少子・高齢・人口減少が危機なのではなく、危機に的確に対応できないのが危機 !

連載の1回目は、北本市が抱える「ふたごの事実」である少子高齢・人口減少の実態を述べました。2回目は、昭和40年代からの人口急増そして、平成20年以降の人口減少の動態について述べました。3回目では、長期的な人口動態予測と幻になった成長戦略としての「県央アクシス計画」について述べました。

 

ここまで、北本市の人口減少の推移とその原因ともいえる本質が明らかにしました。この傾向は、現在も続き、まさに「危機」に的確に対応できないことが危機であるといえます。

 

この危機をどう乗り切るのか。ご一緒に考えていきましょう。


バブル崩壊直撃か

第3回目に紹介した「県央アーバンアクシス計画」は、バブルが崩壊した後の平成6年に策定しています。有史以来の経済危機の中ですから、民間企業なら考え直しているでしょう。

 

この計画の基は県が主導して昭和63年に設立した「県央都市づくり協議会」です。

 

昭和63年(1988年)はバブル経済前夜で、高度経済成長期でした。しかし、アーバンアクシス計画策定の平成6年以降は、バブル経済が崩壊し成長に大きな陰りが見え、土地神話の崩壊と金融機関の破たん(拓銀、山一証券など)が起きました。

 

このような状況で、公共事業にも影響が出、高速道路整備に遅れや中断が相次ぎました。

 

高速埼玉中央道路は中断となり、上尾バイパスも圏央道桶川JCTまでとなりました。また、圏央道の工事は、北本市域にオオタカの営巣が確認されたことから、工事が中断するなど県央アクシス計画の「交通体系の整備」に大きな影響が出ました。

新駅計画とん挫

また新駅は、市の請願駅であり旧国鉄(その後JR)に要望してきましたが、なかなか実施に至る回答が得られない状況が続いていました。そういう中で、市は2度3度と立地に向けて調査・計画を策定したが、決定的な方針を出せる状況には至りませんでした。

 

そのような中で、圏央道の整備で踏切の廃止に伴い、新駅設置の環境が整ったと、JRから整備に向けた調査可能の方針が平成25年に示されました。

 

石津前市長はそれを受け、総事業費約72億円(北本市負担約50億円)の新駅立地事業計画を策定し、賛否を住民投票に付しました。結果は、投票者の3分2が反対で白紙となり、現在に至っています。

 

このように、北本市の成長戦略であったアクシス計画は、バブル経済崩壊等の社会変化に飲み込まれ、途中で見直すこともなく無残にも忘れ去らてしまいました。

 

しかしながら、この計画を発端にしたであろう「久保区画整理事業」は、途中で見直すこともなく20数年にわたって事業が継続、財政負担等将来に大きな課題として政治決断を待っています。

 

いずれにせよ、北本市は社会経済の環境変化があったとはいえ、変化に適合した再構築を図ることもなく、成長のチャンスを逸したと言えます。

平均年収は減収傾向

それでは、北本市の経済産業力、そして財政の基盤について北本市の統計資料等から見てみます。

 

先ず、2017年総務省が発表した資料を基に、全国市町村別の平均年数です。北本市は314万9,348円で全国335/1741(2010年は、323万8,050円で198/1741)となっています。平均年収は減収傾向にあります。

 

桶川市は322万7,593円、鴻巣市は316万9,169円で、1位は東京都港区の1,115万755円でした。

 

1位の港区の2010年は、943万5,258円ですから、この7年間で大きく伸びています。

 

また、2010年と2017年の比較で大きく伸びているのが北海道です。猿払村は813万7,339円で3位。ホタテ漁が豊漁でついにランキング3位にまで登り詰めています。北海道の田舎町が平均所得813万円を稼ぎ出している事は驚きでしかありませんと、公表した機関は述べています。

 

北本市の個人所得は、減少傾向にあります。


市内総生産26年1527億円

さて北本市の総生産額と市民所得について検証します。下表1が、産業別総生産額の推移です。

 

北本市の統計によれば平成26年は、1527億1,100万円ですが、平成24年の1574億4,000万円に比べると約27億円減少しています。

 

産業構造別では、第一次産業が0.4%、第二次産業が23.2%、第三次産業75.3%でサービス産業が主体であります。しかし、平成元年は第二次産業が42.9%と、現在に比べ120億円以上の生産額になっていますが、その理由の詳細は検証しきれていません。

 

私の記憶(印象)では、平成5年頃の製造業者の市外移転前であったように考えています。

 

第一次産業の農業は、構成比0.4%、金額も6憶円以下です。主要産業にはなり得ていません。製造業も大手菓子メーカーの進出がありましたが、自動車製造企業の一部撤退もあることから、企業誘致の動向によっては停滞は避けられないように見ています。

 

第三次産業は、平成元年から大きく伸びているのが、金融・不動産業です。

 

平成26年は約411億円で、業種別のトップです。土地の売買取引だけでなく、貸家(アパート経営)・貸地(大型商業施設等)が増えていることが要因であろうと見ています。

 

今後人口減少が進むと、第三次産業の減退が懸念されます。

市民総所得26年1849億円

次に下表2ですが、市民所得の推移表です。平成26年は1849憶1,200万円ですが、平成10年の2446億円をピークに、1,700億円から1,800億円で推移しています。

分配の内訳で見ると、総所得の3分2が雇用者所得(賃金報酬)であることから、高齢化と人口減少(生産年齢層の減少)は、市税収入に直接影響が受けます。

 

北本市は、昭和40年代からの都市化で勤労者が増え、個人所得が経済の根幹でありました。

 

一方企業所得(民間法人企業)が、平成元年の倍以上伸びていますが、大手自動車製造企業の業績拡大によるものです。しかし、個人企業所得も堅調であることから、今後の経済基盤は個人所得の目減りを抑えるとともに、企業所得の伸びの確保が課題となります。

データが示す市税減収

1回目に、ふたごの事実により、市の財政が大きく影響を受けると述べました。

 

市の財政担当も、長期財政計画でも、市税収入の減少を予測していますが、これは平均所得、産業別生産額、市民所得の推移からも裏付けられます。

 

市税収入の減収に対し、歳出の圧力は高まっています。鴻巣市・行田市の3市による「ごみ処理施設」建設(総額最大約300億円の4分の1)、高齢化による医療・介護等の扶助費、少子化対策としての保育・教育等の子育て支援の充実、下水道や道路、公共施設のメンテナンス費用、そして「久保区画整理事業」(残り70憶円から100憶円)と、財政に対する圧力は想像以上でしょう。

 

本市の産業構造から、どの産業分野に成長性があるのか。データを一つの事実として、確実な分野への投資が必要であろう。(次回述べます)




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